2020年ありがとうございました

恋々です。年末年始仕事やらなんやらごたついておりまして、簡易的にですが一年のご挨拶をさせていただこうと思います。本当は色んな感想文も書きたかったのですが、なにせ余裕がないので…。

あらためて、2020年も各所作品やら何やらを見ていただきありがとうございました。
コロナの影響も相待ってか、下半期から創作意欲の減退に陥りあまり更新できないのが続いており、たいへん悔しゅう感じております。絵を描けない恋々はただの無能であると卑屈にもなります…ショゲ。来年は怠惰な自分のケツを叩き、生きてありたいです。最近はようやく「何もしない日」に慣れてきたような気がしています。しないというよりは、ゲームやったら本読んだりしているわけですから、インプットをしている、わたしの成していることは無為ではない…と呟きながらサウスパークずっと見てます。正直新規ジャンルに触れる元気もないので困ったものですが。サウスパーク面白いです。積んでいた作品をゆっくり消化したいですね。毎年言ってる気がしますが。

そういえば先日今年一番よかった本は何?と尋ねられました。一年を総括するタイミングとはいえもはやいつから2020年が始まったかなんていうのも全然思い出せないくらい疲れて?いるので、振り返る気は無いのですが…特に、「よかった!」と強く思えるような小説にも出逢わなかったと感じます。ていうか「よかった」って、何をもって、何を基準にしているのかまったくわからないですよね。明確に、隕石が落ちたような衝撃を感じるようなものを「よかったもの」と呼ぶなら、たとえばそれは、心に数週間も残るような傷を残すものも「よかった」と呼んでいいのかなと思います。
と、いう視点で今年一番は花村萬月の「日蝕えつきる」かな。



日蝕の瞬間に死んだ五人の男女の短編集です。江戸時代の暗黒面を舞台にした物語群ですが、どこまでも救いがなく、残酷で苦しいばかりのお話は、想像力のさらに上を行くような悲劇を、「でも本当にあったことかもね」と突きつけてきます。

読了後は胃がもたれるような不快感や悲しさに襲われ、しばらく落ち込みました。ここにあった物語の、その誠実なまでの残忍さはいつまでも心に焼き付きました。ただ、苦しい、目を背けたかったものを見てしまったという後悔だけではない感情も芽生えて、それは憐れみ、慈しみだとか、残酷な物語を喜ぶわたしの一部分だとか、とにかく、「突きつけられた物語」から見えた世界そのものに価値を感じました。昔々にあったであろう悲しい事象を(たとえば、飢えや病で死ぬ人のことを)知らなかったわけではないのです。それでもどこか、安穏とした日々の中で想像しきれなかったものを描き切った筆力の確かさと、残酷絵の中に見出す美のようなものに感服を覚えました。はじめて九相図を見た時の興奮とおなじです。美しいものが崩れていくものを描いたその絵の中に、いままで知らなかった美を見出したのだから。

と、いうわけで今年読んだ本で一番の出会いはこの本でした。花村萬月はインマヌエルの夜を読んだ時にもずいぶんショックを受けましたが、これはまた別角度の衝撃であったと感じます。


過ぎ去ってみれば正月を迎えたのがつい昨日のようで、あっという間に流れた今年は、事象のひとつひとつを振り返ってみれば意外な濃さにも驚きます。生き残ったことへの失望と、五体満足であることへの安堵を抱えて、今年を締めくくりたいと思っています。正直身の回りが大変すぎて、今年はいままでの人生で一番一年が終わる実感がないのですが。本当におだやかな日と言うのは返ってくるのでしょうか。それとも、これくらいどうでもいいようなさびしさでちょうど良いのかしら。

ではでは、良いお年を。